『嘘つき姫と盲目王子』のストーリーが公開
2018年5月31日に発売を予定している『嘘つき姫と盲目王子』(PS4/PS Vita/Switch)のストーリーを公開。
物語
ある森に、狼によく似た人食いの化け物が住んでいました。
その化け物は恐ろしい姿に似合わぬ美しい歌声を持ち、月夜の晩には誇らしげにその歌声を響かせていました。
しかし、その夜はいつもと様子が違いました。狼の化け物が小高い岩の上で歌を歌い終えると、どこからともなく拍手が聞こえてきます。
狼がそっと岩の下をのぞくと、身なりの良い少年がこちらを見上げていました。森のそばにある小国の王子が、狼の歌を聴きに来ていたのです。岩が邪魔で、王子からは狼の姿が見えていないようでした。
普段の狼ならば、すぐに王子を捕らえて食べてしまっていたことでしょう。しかし、狼は王子を見逃しました。それは単なる気まぐれでした。
それからというもの王子は毎晩、狼の歌を聴きにやって来ました。ふたりが言葉を交わすことはありません。けれども、いつしか狼は王子を食べようという気持ちを失っていました。
その夜も狼は王子に歌を聴かせていました。しかし、狼が歌い終えても拍手が聞こえてきません。
不思議に思い足元をのぞくと、なんと王子が岩を登ってきているではありませんか。
きっと歌声の主に会おうと思ったのでしょう。
自分の正体を知ったら、王子はもう歌を聴きに来なくなってしまう――そう思った狼は王子の顔に手を伸ばしました。目を覆い、姿を見られないようにするつもりでした。
しかし大きな爪がついた狼の手は、誰かに優しく触れるにはあまりにも不向きでした。
狼の意に反して、鋭い爪が王子の顔を切り裂きます。
突然の痛みと化け物の大きな手に驚き、王子は地面に落下し気を失ってしまいました。
王子の叫び声を聞きつけたのでしょう。お城の兵士たちが王子を助けにやって来ました。
兵士たちに矢を射かけられ、狼は森の奥へと逃げ込むしかありませんでした。
王子はもう、狼の歌を聴きに来ません。
狼の歌を褒めてくれる者など、この森にはひとりもいませんでした。
きっと、そんな変わり者はこの先もいないでしょう。
やがて狼は、王子が盲目となったこと、顔の傷を忌み嫌った王族によってお城の塔に幽閉されていることを知りました。
狼はいてもたってもいられず塔に忍び込むことにしました。
薄暗い牢の前で狼が目にしたのは、ぼろぼろの服をまとった王子の姿でした。
醜い傷を隠すためでしょうか。顔には粗末な布が巻かれています。
狼の胸は痛みました。しかし王子の目を切り裂いたのは自分です。今更どう声をかければ良いのでしょう。
聡明な王子は、牢の前にたたずんでいるのが、あの美しい声の主であることに気が付きました。
ですが、それが自分を傷つけた化け物だとは知りません。
王子の目が見えないのをいいことに、狼はとっさに嘘をつきました。
「わたしは隣国の姫。あなたのお見舞いに来たの。その目、森の魔女に治してもらおうよ。」
狼は知っていました。森の奥には恐ろしい魔女が住んでいることを。
代償を支払えば、彼女はどんな願いも叶えてくれるのです。
そう。王子を魔女のもとへ連れて行けば、彼の目を元通りに治してくれるはずです。
けれども自分は化け物です。こんな体で王子に触れれば、きっとまた傷つけてしまうに違いありません。
狼は後で迎えに来ることを王子に約束し、森の奥にある魔女の館へと走りました。
王子を、あの冷たく寂しい牢屋から連れ出す「姫」となるために。